黄昏に香る音色 2
「はい!」

香里奈は慌てて、電話に出た。

「夜分、遅く…ごめん」

電話の相手は、直樹だった。

「あんなことがあったから…気になって…大丈夫だった?」

香里奈は、きちんとソファに座り直した。

「うん…大丈夫」

「やっぱり…店には、帰れなかったんだろ」

「うん。でも、昔住んでた家があったから」

香里奈も直樹も、少し間があいてしまう。



「マスコミは来てないの?」

「ここは大丈夫…」

少し香里奈は考え、

「でも…」

「でも?」

直樹は聞き返した。

香里奈は息を整え、

「今、電話があった…」

「誰から?」

「お父さんのマネージャーから…」

「お父さん…?」


香里奈は、この前の襲われた事件を説明した。

「あれも、志乃ちゃんのことも…みんな、お父さんが関係していたの」

香里奈の言葉に力が入る。

「今回のバンドに入る話もみんな…お父さんが、関係していたの」

「速水さんのお父さんは…なく」

「そう…亡くなったと思っていた。でも、生きていた」

香里奈は、目をつぶった。

「速水さん…」

香里奈は目を開け、

「あたしは…お父さんに会わないといけない…」
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