黄昏に香る音色 2
「香里奈!あんた、何か隠してるでしょ?」

里緒菜が、詰め寄った。

「べ、別に…」

香里奈はまた、目をそらす。

「あんたは、態度に出やすいの」

恵美も詰め寄る。

香里奈は後ずさる。

「べ、別に…何でもないよ…」

「香里奈!」

里緒菜が凄んだ。




「速水さんは、コンサートに呼ばれてるだ」

屋上の扉を開け、直樹が入ってきた。

「ナオくん…」

里緒菜が、つぶやいた。

「あんたには、関係ない!これは、あたしたちの問題だ!」

恵美が叫んだ。

「香里奈ちゃん!コンサートなんて、行く必要ないよ」

祥子が言った。

「行かなくちゃならないだ」

直樹の前に、里緒菜が立つ。

「どうして?」

直樹は、真っ直ぐ里緒菜を見据え、

「そこに、速水さんのお父さんがいるから…」

直樹の言葉に、

「ええーっ!」

恵美と祥子が声を上げた。

「香里奈ちゃんのお父さんって…死んだはずじゃ…」

「生きていた。だから、会いに行かなくちゃならない」

「香里奈!」

里緒菜が、香里奈の方を見た。

香里奈は、こくりと頷いた。
< 201 / 539 >

この作品をシェア

pagetop