黄昏に香る音色 2
「それとも…」

ティアは、香里奈を見つめ、

「これを聴いて、何も感じない奴は…音楽に対する感性がないか…本当のバカか…」

香里奈は、ステージの袖から、じっと観客席を見ていた。

暴れる人。

泣く人。

頭を抱え、うずくまる人。

ただ魅せられる人。

そして、

時がたつとともに、

涎をたらし、倒れ込んでいく。

「こんなの…」

香里奈は、ティアの方を向いて、

「音楽じゃない!」

ティアを睨んだ。

ティアは、ニヤリと笑い、

「これも音楽よ。音楽は人を興奮させ、狂わせるもの」

「ちがう!もっと楽しくて、感動するものよ」

ティアはせせら笑い、

「浅い音楽しか、聴いたことがないのね」

「浅くなんてない!少なくても、志乃ちゃんの音楽は、みんなを幸せにしていた!」

香里奈は叫んだ。

「志乃…」

ティアは眉をひそめ、

少し考えて、

「ああ…あの壊れた人形ね…忘れてたわ」

「壊れた人形…」

「そうよ。ろくに使えない…人形」

「志乃ちゃんを…ひどい」

「ひどい?」

ティアは、大声で笑った。

「あんな程度の歌しか歌えない…使い捨ての流行り歌手…人形で十分よ!」

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