黄昏に香る音色 2
「あなたは間違ってる」

香里奈は、ステージに歩き出す。

「間違ってる?あたしがあ」

香里奈は振り返り、

「間違ってないかもしれない…でも」

香里奈は、前を向いた。

「それが、すべてじゃない」



眩しいほどの照明が、

まるで太陽のように、降り注いでいる。

香里奈の登場とともに、演奏が終わる。

観客は驚き、

まずはKKを見、

次にステージに上がった香里奈に、目がいった。

香里奈は学校帰り…

場違いの制服のままだ。

アリーナから、2階、3階まで満席だ。

圧倒的な人の迫力に、

押しつぶされそうになる。

拳を握り締め、

香里奈は、久しぶりに、マイクの前に立った。

大きく息をする。

人々の視線がすべて、香里奈に向く。

「曲は?」

ギターを抱えた大輔が、香里奈に近づき、耳打ちした。

香里奈は、呟いた。

「リトル・ドリーム・…」

志乃の初期の曲であり、

彼女が初めて…歌詞を書いた曲だった。

「OK」

ぶっきらぼうに、大輔は頷いた。

ギターのカッティングから、

曲が始まる。

香里奈はさらに、

拳をぎゅと握り締めた。
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