黄昏に香る音色 2
「…影響を与えたのかしら…」

里美はため息とともに、また一口飲んだ。

「里美…」

明日香は、グラスを置いた。

「何…?」

明日香は、里美を見つめ、

「ありがとう。里美には、感謝してるわ」

明日香の言葉に、里美は目を丸くし、

顔を真っ赤にした。

「何よ…いきなり…」

「あんたがいるから…あたしは、この店を留守にできる。香里奈を任せて、安心できる」

「ばかあ」

里美は、カウンターにもたれ、

「あたしも、ここにいるから…幸せなのよ」

「里美…」

「あんたは、世界中のファンの為に、音楽で幸せを与え…あたしは、香里奈といっしょに暮らすことで、女として、血はつながってないけど…母親の幸せを得ているわ」

里美は、明日香を小突き、

「お互いさまよ」

明日香は微笑み、

「もう一杯飲む?」

グラスを突き出した。

「あたしは、他のやつを飲むわ」

里美は顔をしかめた。

それを見て、明日香は笑い、

里美も笑った。

新しいグラスで、

二人は乾杯した。


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