黄昏に香る音色 2
「天城さん…」

啓介は少し驚いた。

そこにいたのは、天城百合子だった。

百合子は、笑顔を浮かべ、

「ライブ見ました。さすが啓介さんですね。感動しました」

「ありがとう。でも、どうしたの…こんな所まで」

「この前、ダブルケイに行ったときに…今日このライブに飛び入りすると聞いて」

「そんな話したかな…」

啓介は、首を傾げながら、歩き出した。

百合子は、微笑みながら、

啓介の隣を歩く。

「あたし…ちょっとストーカー入ってるかも…」

百合子の言葉に、

啓介は、目を丸くした。

「ストーカー?」

「はい!」

元気よく返事する。

「誰の?」

啓介の問いに、

百合子はクスクス笑い、

「啓介さんの」


「え!?」

思わず声を上げた。

百合子は、少し前を歩き、振り返った。

「限定ですけど…」

そう言う百合子の表情が、啓介には気になっていた。

啓介は頭を振ると、

百合子を追い越した。

「冗談はやめてくれ」

「冗談じゃないです」

ダブルケイにいる時と違う百合子の態度に、
啓介は、少し冷たい態度で応対した。

「啓介さん」


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