黄昏に香る音色 2
啓介はある日、気付いた。

百合子の横顔が、どこか似ていることに…

目もとが…

恵子に似ていた。

いたずらぽく見つめるとき…不満げなときの表情が…

雰囲気が…そっくりだった。

そんな理由で、百合子に惹かれていた。

好きとかじやなくて…

母親の面影に、惹かれている。

そんな自分を、戒めながらも、ダブルケイ以外で演奏する時は、

必ず見に来る百合子に、

啓介は、逃げられないものを感じていた。



「天城さん」

啓介は、前を歩く百合子に声をかけた。

「何です?」

啓介は、百合子を追い越し、

「あまり…付きまとわないでほしい。迷惑だ」

突き放そう、突き放そうと思うたびに、

逆に運命の糸が、

体に、巻き付いてくる気がしていた。

< 224 / 539 >

この作品をシェア

pagetop