黄昏に香る音色 2
「こんなところまで…一体」

カリファルニアの青空の下、

啓介は、果てしなく続くハイウェイを走っていた。

「わかってる癖に」

助手席に座る百合子の腕の中に、

1人の赤ん坊がいた。

「その子は…?」

車のハンドルを握りながらも、バックミラーに映る赤ん坊を、啓介はチラット見た。

「わかってる癖に」

百合子は、真っ直ぐ前を向いていた。

「しばらく、姿を見せなかったから…どうしてたのかと…」

車は、ひたすら真っ直ぐ走る。

「何してたの?」

啓介は、赤ん坊の話題には触れなかった。

「一応は、心配してくれてたんだ」

百合子は嬉しそうだ。

「そりゃあ…そうだろう…」

しばらく、無言が続く。

やがて、

百合子が、無言に飽きたかのように、口を開いた。

「子供を、生む準備をしてたの」

「子供…」

「この子よ」


百合子は赤ん坊を抱き上げて、


啓介に見せた。


「この子は…」

啓介は、赤ん坊をチラットと見た。

「あなたの子供よ」

百合子は、赤ん坊越しに微笑む。

「なに!」

啓介は、驚きの声を上げた。

「身に覚えがないとは、言えないでしょ」

百合子は、にやっと笑った。

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