黄昏に香る音色 2
「もどってよ!」

「駄目だ!」

赤ん坊を挟んで、車内で、啓介と百合子はハンドルを持って、争う。

車は、ジグザグに走る。

百合子は思い切り、力を入れる。

「今さら…」

百合子は叫ぶ。

「もう裏切った癖に!」

車は、道を外れ…




「KK…」

ティアは、啓介を揺り動かす。

「裏切った…」

啓介が呟く。

通路の向こうから、ガードマンたちが走ってくる。

「早く医務室に!」

ガードマンが、啓介を抱えようとした瞬間、

啓介はそれを制した。

「大丈夫だ」

啓介は立ち上がり、歩き出す。

「KK!?」

心配そうなティアを、横目で見ると、

啓介は苦笑した。

壁の向こうの観客席の騒ぎの中、啓介はゆっくりと歩き、

会場を後にした。


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