黄昏に香る音色 2
「そうね…。でも、あれくらいで済んだのは、よかったわ。すぐに、警察がきたから、騒ぎもおさまり、怪我人も、ほとんどが軽傷だったから」

香里奈はすぐに、シチューをたいらげた。

「おかわりは?」

香里奈は頷く。

明日香は、お皿を持ち、シチューを入れにいく。


今回のことで、世間に彼らの危険性がわかったから、無闇に動けなくなるはずよ」

明日香は、おかわりを香里奈に渡すと、ソファに座った。

「あの音は、麻薬みたいなものだから…長い時間聴いていたら、危険だった」

明日香は手をのばし、

香里奈の髪を撫でた。

「だから…あなたのお陰で、みんな助かったのよ」

明日香は、香里奈に微笑みかけた。

「ママ…」

明日香は、立ち上がると、

「今日はここに泊まるわ。お風呂、沸かすね」

「和恵は…」

「和恵のことは、里美に任してる」

「ママ…」

香里奈は、何か言いかけて、言葉を止めた。

明日香は、そんな香里奈をじっと見つめ、

「そうね…このことも、きちんと話せないとね…」

明日香は、再びソファに座り、

香里奈の目を見た。

「和恵のことだけど…きちんと、説明したことはなかったわね」

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