黄昏に香る音色 2
「和恵は…あたしと啓介の…」

明日香は、少し視線を香里奈から外し、

その向こうにあるCDラックを見つめた。

「の間に…」

「ママ!」

香里奈は、ソファから立ち上がり、

明日香の視線を塞いだ。

「あたしは、ママを愛してる。そして、和恵も愛してる。大切な妹だから」

「香里奈…」

「ママはどうなの?」

香里奈は、じっと明日香を見た。

明日香は、香里奈の瞳の中を覗いた。

そして、微笑むと、

「勿論、香里奈も和恵も愛してるわ」

明日香は立ち上がり、

「二人とも、大切な娘だもの」

香里奈も微笑み、

「それで十分だよ。ママ」

香里奈の脳裏に…赤ん坊の和恵を抱いた明日香の姿が、蘇る。

「あなたの妹よ」

小さな香里奈は、いきなりできた妹が、

ただただうれしかった。

明日香の腕の中を覗き込み、まだ目が見えない和恵に、話しかけた。

「はじめまして、あたしがお姉さんだよ」




「ママ…」

「なに?」

「ママは…」

香里奈は、さっきとは違い、

拳を握りしめ、明日香を見た。

「ママは…パパを…今のパパを愛してるの?」

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