黄昏に香る音色 2
「ねえ…知ってる?」

安ホテルの一室で、テレビを見ていたティアは、一通り笑ってから、

ジャックの方を見た。

「この国って…今まで一度も、民衆による革命によって、国ができたことがないらしいの」

「へぇー」

ジャックには、興味がないみたいだ。

「民衆が、国を動かしたことがない…奴隷の国なのよ」

ティアは、タバコをくわえると、

「よく世界中にあるじゃないカーニバルとか…有名な…。あれは、奴隷が1年に1回だけ、騒ぐことを許された日が、はじまりらしいわ」

ジャックは欠伸をする。

「この国なんて、その典型よ。夏だけの祭り」

ティアはクスッと笑い、

「今もそうね。正月だとか、誰かが優勝したときや…普段も、コンサート会場やライブハウス、仕切られたストリートという名の安全地帯」

ティアは煙を吐く。

「暴れる場所も、発散する所も決まってるから…セキリュティーは甘くなる」

テレビの画面は変わり、

別の地方のスタジオが映り、

そこでも大慌てしている。

「公共施設を襲うのは、一部の人間だけ…テロリストも少数…」

ティアはにやりと笑い、

「まさか…民衆が革命を起こすとは、想定してない」


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