黄昏に香る音色 2
「お姉ちゃん、元気?」

和恵は、明日香と手をつなぎながら、スーパーからの買い物の帰りだった。

「元気よ」

明日香は、和恵に微笑みかけた。

「いつ、うちに帰ってくるの?」

「もうすぐよ」

数は少なくなっていたが、ダブルケイ前は、まだ何人かのマスコミが張っていた。

「ママ…」

和恵が、明日香の後ろに回った。

明日香は前を見た。

ダブルケイに通じる坂道の入り口に、一人の男の子がいた。

マスコミ関係ではない。

学生みたいだ。

男の子は頭を下げた。

「速水明日香さんですね」

男の子は、明日香に近づいてくる。

「あやしい者ではありません。香里奈さんの同級生で…」

男の子は、明日香たちの前で止まった。

「時祭光太郎の甥です」

男の子は、和也だった。

「時祭…父の…」

「はい」

和也は頷き、

「藤木和也と申します。明日香さんとは、いとこになります」

明日香は、和恵の頭を撫で、

「大丈夫」

微笑んだ。

和也は二人の様子を、やさしく見つめた。

「で…あたしに何か、用かしら?」

明日香は和也を見た。

「はい」

和也は頷いた。

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