黄昏に香る音色 2
「ありがとう」
明日香は頭を下げた。
「あ、頭を上げて下さい。世界的にも、有名なあなたに、出て頂くんですから…本当はきちんと、契約しなければならないんですが…」
「時間がないんでしょ」
フェスティバルは5日後だ。
「ギャラとかはいらないわ…有り難う」
明日香の言葉に、
「いえ…有り難うなんて…こちらこそ」
和也は頭を下げた。
「やることができたわ…。こちらも、準備を急ぎます」
明日香は席を立ち、
「和也くんだったわね…」
「はい」
明日香は微笑み、
「香里奈たちをよろしくね」
「はい」
「今日は、会えてうれしかったわ」
明日香は、レジに向かう。
「和也くん」
ふと足を止め、明日香は振り返った。
「父にも、有り難うと伝えておいて下さい」
「はい!」
明日香は頭を下げ、やさしい笑みを残し、店から出た。
すぐに明日香は、携帯を取り出し、
電話をかけた。
「サミー。何とか出れることになったわ」
「そうか!よかった」
電話の向こうで、サミーは喜んでいた。
「サミー。ところで、みんなの予定はどうなの?」