黄昏に香る音色 2
中央国際空港。

待合室に、2人の男と女がいた。

男は40前後。

女は20代前半。

「ニューヨーク、よかっただろ」

男は、感嘆のため息をついた。

「はい。あんな近くで見れるなんて…感動でした」

女は、愛想笑いを浮かべた。

男は気付かず、

「そうだろ。あそこは、会員制で〜日本人は入れないだよ」

男は、自慢げに話し続ける。

「特別にコネで、見ることができたんだよ」

「あんまり、音楽が分からないあたしが、感動しましたもの」

「マイケル・ガット、トーマス・ミラー…ジョン・マクドナルド…世界一流のミュージシャンを間近に見れたなんて、しあわせだよ」

男は、女の肩を叩き、

「君は幸運だ。彼らは、めったに日本に来な…」

男の動きが止まる。

目の前を通り過ぎていく一団に、

目を見開き、あんぐりと口を開ける。

「課長…」

女は、動きの止まった男の横顔を覗いた。

「そんなばかな…」


空港内を、颯爽と歩く一団の先頭、

白髪の老人は、携帯を取り出し、

徐に電話をかけた。

「明日香か?」

老人はサミーだった。

「今、日本に着いた。みんなもいっしょだ。どこにいけばいい?」


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