黄昏に香る音色 2
前夜祭
激しいシャワーの音。

滝のように降りしきる。

大量の湯気が、

ガラスを曇らせる。

「KK」

ガラスの向こうから、声がした。

蛇口を閉め、シャワーを止めると、啓介はバスタオルをつかみ、バスルームを出た。

「KK。会場で、リハーサルの予定がありますが…いかがしましょう?」

ティアの言葉に、

啓介は鼻を鳴らすと、

テーブルに置いてあったグラスに、手を伸ばした。

もう氷が溶け、水のようになっていた。

「新しく、お作りしましょうか…」

「頼む」

啓介は、グラスを渡すと、ベットに座った。

ティアは、小さな冷蔵庫から、氷を取り出すと、新しいグラスを2つ用意し、

そこに氷と、ワイルドターキーをそそいだ。

「リハには、参加しない…大輔たちだけで、やってくれ」

ティアから、グラスを受け取ると、啓介は一口飲み、

顔をしかめる。

「どうかしましたか?」

ティアは、ワイルドターキーのボトルを見、

「お口に、合いませんでしたか?いつも、これをお飲みになられていたので…」

啓介はフッと笑い、

「違うよ…ただ…」

グラスを傾け、

「好きな酒は、変わらないらしい」
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