黄昏に香る音色 2
ダブルケイの営業が終わり…カウンター席で、一人タバコを吸う里美。

明かりを消したステージ。

見つめながら、もの思いにふける。




ゆっくりと、扉が開いた。

「ただいま」

明日香だった。

「おかえり…。今日は、帰らないと思ってた」

明日香は少し、疲れた様子だった。

「和恵がいるからね。できるだけ、目が覚めたときに、そばにいてやりたいから」

明日香は、カウンターに座った。

里美は立ち上がり、カウンターの中に入る。

「飲む?」

「頂くわ」

里美は、いつものお酒をつくる。

ワイルド・ターキー。

2つのグラスを見て、

「あんた、飲めないんじゃ…」

明日香の言葉に、

「一杯ぐらい、つき合うわ」

里美は、グラスを明日香に差し出した。

明日香は苦笑して、受け取ると、

「乾杯」

静かに、グラスを合わせた。


「明日ね…コンサート…」

里美が、呟くように言った。

「うん…」

明日香は、グラスを見つめる。

少し無言で、時が過ぎる。

里美は、カウンターの中から、明日香を見つめ、

やがて、

ため息をつくと、カウンターから出て、明日香の隣に座った。

「明日香…あんたは、変わったわ」

里美は言った。


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