黄昏に香る音色 2
出陣
土曜日。

フェスティバルは、朝早くから始まっていた。

会場は、ダブルケイから山を越えた隣の県の

さらに南に、海側の山の麓だった。

電車でも、特急で2時間半はかかる。





「速水さん!」

普通土曜日は休みだが、今日は午前中だけ、授業があった。

片付けをしていた香里奈に、直樹が声をかけてきた。
香里奈は直樹を見、微笑んだ。

「終わったねえ…帰ろうか」


「香里奈ちゃん!」

「香里奈!」

祥子や恵美も、そばにやってきた。

「行くのか?」

恵美がきいた。

香里奈は首を横に振り、

「よ、よく考えたらね…あたし、呼ばれてないのよ。今回は」

香里奈は舌を出し、

「それにチケットも持ってないし…」

香里奈は笑った。

「香里奈ちゃん…」

三人は、香里奈を見る。

香里奈は、三人を見ずに、カバンを持ち、

「帰ろうか」

思いっきりの笑顔を見せた。

「どっちでもいいけど…後悔は、しないように」

4人のそばを、里緒菜が通った。

「里緒菜ちゃん」

里緒菜は振り返り、

「あたし。用があるから、先に帰るね」

里緒菜は、教室を後にした。
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