黄昏に香る音色 2
「これを…明日香に渡してほしいの」

「ママに…?」

里美は、ケースを開けた。

そこには、トランペットが納められていた。

里美は懐かしそうに、トランペットを見つめ、

「これは…あなたのお爺ちゃんが、使っていたもの…そして、明日香が受け継いだトランペットよ」

香里奈は、トランペットに触れた。

冷たいはずなのに、

とても暖かく感じた。

里美は、トランペットを見つめながら、

「これは、あの子のvoiceだった…。だけど、啓介さんと離れ、バンドを解散してから…ずっと店にしまってあったの」

里美は、トランペットに触れている香里奈の手の上に、自分の手を重ねた。

「明日香に、届けてあげて…あの子の声を」

「うん」

香里奈は、頷いた。

二人は、そっと手を離すと、

ケースを閉めた。

「里美おばさん」

香里奈は、立ち上がった。

手にケースを持って、

「ありがとう」

里美は微笑み、

「気をつけて、いってらっしゃい」

「いってきます!」



香里奈は、里美に敬礼すると、

風のように、

マンションを出ていた。



香里奈を見送った後、

里美は、深々とソファに腰掛けた。

「まったく…親子揃って…世話がかかるんだから…」

里美は、タバコを取り出した。



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