黄昏に香る音色 2
マンションの入り口をでて、

最寄りの駅へと歩く香里奈に、誰かが声をかけてきた。

「香里奈さん」

香里奈は、キョロキョロと周りを探した。

駅の入口近くに、いつも笑顔の直樹がいた。

「ナオくん…」

香里奈さんと、あまり言ってくれないから、

最初、直樹だと思わなかった。

「やっぱり行くんだね」

直樹はまだ、制服のままだった。

どうやら、みんなと別れてから、

ずっと駅前で、待っていたみたいだ。


「どうして…」

直樹は、やさしく微笑み、

「これを渡したくって…」

直樹は、一枚の封筒を、香里奈に差し出した。

「これは…?」

「開けてごらん」

香里奈は、封を開けた。

中から、一枚のチケットが出てきた。

「これって…」

「今回のロックフェスティバルのチケットだ。もう完売して、プレミアがついてる」

香里奈は、チケットをまじまじと見つめ、

「どうして、これを…」

「和也が言ってた…今回は、時祭グループが、メイン主催者じゃないから、チケットが手に入らないと」

「時祭?」

香里奈には、聞き覚えのない名前だった。

「だけど…今回の主催者の一人に…彼女の実家が入っている」


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