黄昏に香る音色 2
香里奈は、一般の人々が入れない関係者だけの…簡易プレハブに通された瞬間、

2つの音の塊が、ぶつかり合った。

観客が、歓喜の声をあげる。

一つは啓介。

もう一つは…。

「ママ!?」

香里奈は思わず、声を上げた。

「これは…」

ガードマンがスタッフに、香里奈の確認をとっていた。

「そんな予定はないと…」

ガードマンたちの話を無視し、香里奈は音にだけに、耳を澄ませた。

「これは…ママの音じゃない…」

香里奈は絶句した。

明日香の音は、普段とまったく違っていた。

「こんなの…ママの音じゃない!」

香里奈は叫んだ。


「そうねぇ…ご、こんなじゃない」

少しかすれた声がした。

「せんせいのおどじゃない」

香里奈は、声の方を見た。
「かりな」

スタッフの中から現れたのは、

少しやすれてはいるが…

「志乃ちゃん…」

紛れもなく、天城志乃だった。
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