黄昏に香る音色 2
ぶつかった生徒は、

さらさらした真っ黒な髪に、黒く大きな瞳を持った

女の子だった。


女の子はじっと、

直樹を見つめていた。

瞳の奥まで、見ようとするように。


「あ、あのお…」

あまりにも…長い時間見つめるから、

直樹は、知ってる子かと…思い出そうとした。

けど、見覚えがない。

「ナオくん!」

付いてきていない直樹に気づいて、香里奈は、遠くから叫んだ。

「あ!」

直樹は、女の子から視線を外した。

その瞬間、

女の子は、直樹が来た方向に走り出した。

学校の方へ。

「ナオくん!」

香里奈は叫んだ。

直樹は慌てて、香里奈のもとに走った。



「知ってる子?」

「知らない…と思う」

「ふ〜ん」

香里奈はまた、歩き出した。

直樹は首を傾げ、歩き出した。




その様子を、

走り去ったはずの女の子は、見ていた。

遠くから、じっと、

二人が去っていくのを。


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