黄昏に香る音色 2

もう一つの血筋

「失礼しました」

頭を下げ、去っていく少女を、

感心したように、光太郎は見ていた。



とある料亭で、

光太郎は、得意先の会長と会っていた。

「よくできたお孫さんで。しっかりなさってらっしゃる」

光太郎は、会長にお酌をしながら言った。

「自慢の孫です。まだ高校生なんですが」

会長は、ぐいっと一気にオチョコをあける。

「多分、私ではない…母方の血が強いんでしょ」

「母方?」

光太郎はまた、お酌をする。

「孫の母親のおばが、世界的に有名な人物でして…」

「有名な人物?」

「安藤理恵…。ご存知ですかな?結婚して、すぐに離婚し、アメリカで亡くなったらしいのですが…」

「安藤理恵」

「勝手に離婚して、家を飛び出したらしく…向こうの家では、勘当されてるらしいんですが」

動きが止まっている光太郎に気づき、

「私だけ、飲んでるじゃないですか!さあ、時祭会長も」

「頂きます」

光太郎は、オチョコを差し出した。




座敷を離れ、歩く少女は、長い黒髪をなびかせ、

店を後にした。

その向かう先は…

愛する男がいる…

大路学園高校。



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