黄昏に香る音色 2
第二部 Love Songs

部屋にあるー全身がうつる程の大きな鏡は、

毎日、

あたしに確認させる。

自分の商品価値を。

普通よりは、上だと思う。

それは…そうでいられるように、

毎日努力してきたから…。

女は顔や容姿じゃない。

と、言い切れる環境にいる人が、羨ましかった。

本音と建て前。

薄ぺらい建て前の、

透けた本音。

そんな視線と、賞賛の中で、生きてきた。

そんな世界から、少しでも逃げたくて、公立の高校にいくことにした。

確かに、そこにも、

イジメやいろんな問題があったけど、

所詮同い年だ。

あらゆる世代から、

いつも見られ、監視され、品定めされ、時に嘲られ、

誉められる。

そんな死ぬまで続く…

しがらみよりは、ましに思えた。



「お嬢様…お時間です」

ドアをノックする音とともに、この家に仕えている執事が、姿を見せた。

「今、行きます」

鏡にそっと手を触れる。

大きな鏡は、部屋のすべてを映していた。

この鏡は、パパがつけたもの。

お前のすべては覗かれていると思いなさい。

里緒菜は、鏡の中の自分を見つめる。
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