黄昏に香る音色 2
数多くのフラッシュの中、

藤木和也はいた。

数多くの服に囲まれながら。

「OK!よかったよ。カズくん」

撮影の様子を見守っていたオーナーが、歓喜の声を上げた。

「最高〜!」

今まで、親戚だった企業の後ろ盾があったが…今の和也には、それがなかった。

だけど、

時祭グループの力が関係ない小さな店は、和也をこれまで通り、モデルとして使ってくれた。

この店も、数少ない、和也を使ってくれている店の一つだった。

この店のホームページや、ネット関係は、すべて…和也がモデルになっていた。

「ありがとうございます」

タオルを受け取り、汗を拭いながら、和也はオーナーに近づいた。

「これから、ドンドン新製品が入ってくるから…頑張ってちょうだいね」

「はい!」

和也は笑顔でこたえた。

「よろしくね」

オーナーは、和也の肩を叩いた。





「すいません…今日は、これで失礼します」

時計を見、時間を確認した和也は、頭を下げると、少し急いで、スタジオを後にした。

「勿体無いわね…あんなに売れっ子だったのに…」

オーナーは、和也の背中を見送りながら、呟いた。
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