黄昏に香る音色 2
「おはようございます」

「おはよう」

行き交う生徒と挨拶を交わしながら、

牧村優一(ゆう)は、学校へと向かっていた。

朝から日差しが強い。

眩しそうに、目を細めたゆう。

「おはようございます」

一際、透き通るような声の挨拶が、ゆうに向けられた。

「あ、おはよう」

声をかけられた方向を向くと、1人の女生徒がいた。

「ああ…」

ゆうはすぐに、その女生徒の名前が浮かばなかった。

目立つ子ではなかった。

しかし、誰よりも大きな瞳と、教室で佇む姿だけは、妙に印象に残っていた。

女生徒は笑顔で、

「牧村先生って…今度、軽音部の顧問をなさるんですよね」

「ああ、そうだけど…」

「あたし、入部するかもしれません」

ゆうは、その子の名前を思い出した。

「その時は、よろしくお願いします」

丁寧に頭を下げ、先を歩いていく後ろ姿を見送りながら、ゆうは呟いた。

「高木優…だったな」
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