黄昏に香る音色 2
人としての生活の悪癖
「昨今…世間を騒がしている…いじめについてですが…」

職員室。

昼休み、特別会議として、職員全員が集まっていた。

「我が校では、まだ目立った事例は、確認されていません」

教頭の事務的な口調に、淳はせせら笑った。

「本田先生…何か?」

教頭は、淳の方を見た。

一番端の席に座っている淳に、他の先生たちの視線が向く。

淳は肩をすくめ、

「何もないですよ…」

そして、クククッと笑うと、

「何も見てませんから…」

「本田先生!会議中です。こんな時に笑うなんて、不謹慎でしょ」

美術の先生である町田康子が、席を立った。

「失礼」

淳は右手で、口元を押さえた。

しかし、目が笑っている。

ゆうは、そんな淳をじっと見つめていた。

「…まあ…うちに、いじめは、ないと!教育委員会に、報告しておきます」


教頭の締めの言葉により、会議は、

大した議論もなく、終了した。

先生たちは、一斉に立ち上がり、次の授業に向かう。

< 324 / 539 >

この作品をシェア

pagetop