黄昏に香る音色 2
「沖縄の悲劇…原爆の投下…。それだけではなく、日本自身も、他の国に多大な傷を負わせました」

ゆうは、教壇に戻る。

「歴史とは、ただ覚えたり、こんなことがあったんだな…と思うのではなく、過去の経験として、今を学ぶこと。昔と同じ過ちをおかさないように、することです」

授業が終わるチャイムが、鳴り響いた。

「起立!礼」

授業は終わった。

ゆうは頭を下げ、教室を出た。

(話過ぎた…)

テストに出ることだけ、話すべきなんだろうが…

俺は人だ…。

生徒も人。

授業の少しは、人として触れ合いたい。



「先生」

廊下に出ると、すぐに呼び止められた。

ゆうが振り返ると、優がいた。

「…高木さん」

優は微笑み、

「今日の授業…ためになりました」

優は、ペコット頭を下げると、そのまま、教室に戻っていった。


(わざわざ言いに来たのか)

ゆうは、教師として、うれしかった。

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