黄昏に香る音色 2
「かったるいなあ〜」

ぐずぐず文句を言いながら、中谷美奈子は、理科室のドアを開けた。

「うん?」

目の前に、何やらブツブツ言いながら、夢中でパソコンを打っている男がいる。

美奈子は、見たことがなかったが…

多分、臨時の教師だ…。

美奈子が、理科室に入ってきたことすら、気づかないくらい、パソコンに夢中だ。

美奈子は近づき、後ろから、画面を覗いた。

「如月里緒菜…」

美奈子は、打ち込んでいる名前の1つに、驚いて、思わず声が出た。

「え!?」

その声で、やっと淳は気づき、座っていた椅子から、飛び上がった。

「お、お前は…何だああ!」

美奈子は、教科書を丸め、それで肩を叩きながら、

「次の授業で、ここ!使う者ですけど!」

美奈子は、机の上にあるノートパソコンを見、

「生徒の名前、打ち込んでありますけど…何ですか?」

美奈子は、淳を睨んだ。

「こ、これは…」

淳は慌てて、ノートパソコンを閉じた。

「せ、成績の、か、管理だ…」

「ふ〜ん」

「ほ、本当だからな!」

淳は逃げるように、理科室を出ていった。

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