黄昏に香る音色 2
「先生…?」

生徒の声で、ゆうは我に返った。

少し、ぼおっとしてしまったようだ。

(朝見たCMのせいだな…)

唐突に、画面に映った…懐かしき思い出に。

さらに、綺麗になったあの人の姿を、久々に見た。

噂はきいていたが、日本にいないから、長いこと会ってなかった。

(多分、俺の結婚式で会ったきりだ…)

テレビに見惚れるゆうを、

後ろから、じっ~と睨む妻。

「相変わらず~。明日香さんは、綺麗ですよね」

ぎくっとして、慌ててテレビをかえようとするが…リモコンが見つからない。

「そんなに慌てなくても…わかってることですよ」

妻…牧村幸子。

彼女も、明日香を知っていた。

同じ歌手として…。

今は、たまにしか歌わないが、音楽活動はやめていなかった。

ゆうは、妻といっしょにやっていたけど…

教師になってから、あまりいっしょに、ステージにたっていない。

幸子は、ため息混じりに、

「昔は…。お前を、ステージに連れていってやるとか、言ってた癖に…」

ゆうを教師になるよう、すすめたのは、幸子だ。

でも、女はむずかしい…。

ゆうはそそくさと、家を出た。

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