黄昏に香る音色 2
一人、帰路につく。

「はあ〜」

ため息をつきながら、歩く香里奈。

みんなに、部活がある日は、退屈だ。

何度も、ため息をついていると、

「何か悩んでるのか?」

後ろから、声がした。

振り返ると、

「藤木くん!」

「よっ!お疲れ」

和也は、軽く手を上げた。

「どうしたの?こんな所で」

和也の家の方向とは、反対だ。

「今日は、モデルの仕事があって…こっちの駅の方が、近いんだ」

和也は、香里奈の帰る途中にある地下鉄に、向かっているみたいだ。

「それより、どうした?何度も、ため息なんかついて…今、噂の歌姫が」

「や、やめてよ!あれは、ネットが煽ってるだけで…当の本人に、変わりはないんだから」

香里奈は、顔を真っ赤にした。


しばらく、二人は無言で歩いた後、

香里奈は、和也の方を向いた。

「ナオくんって…」

そこで、また会話が止まる。

「直樹が…どうした?」

和也がきいた。

また少し、無言になり…しばらく歩くと、香里奈は足を止めた。

「あたし…」

和也も、足を止めた。

「あたし…ナオくんに、何かしたかな?」

香里奈は、和也を見、

「最近…どこか…よそよそしくって…あたしを避けてる…気がするの」

そして、また前を向くと、

「ちょっと前まで…ナオくんの笑顔しか見たことがなかったのに…最近は…」

香里奈の瞳に、直樹の瞳がよみがえる。どこか、影を帯びた瞳。
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