黄昏に香る音色 2
「ったく…何があったんだ…」

部室のドアを開けることをあきらめた直樹は、仕方なく、

鍵が開くまで、どこかで時間をつぶすことにした。

廊下を歩き、

食堂まで行き、ジュースでも買おうと決めた時、

「飯田さん…ですね」

後ろから、声をかけられた。

いきなりだったので、少しびっくりとして、直樹は振り返った。

そこには、スラットした細身の女の子が、立っていた。

黒髪と、大きな瞳が…印象的だった。

「きみは…」

女の子は、にこっと微笑んだ。

直樹の記憶が動いた。

歌手としての道を歩こうとしている香里奈。彼女と見た里緒菜の公演の帰りに…すれ違い…直樹に熱い視線を投げ掛けていた…少女。

「確か…会ったことが…」

「覚えてくれていたんですね」

少女は嬉しそうに、直樹に一歩近づいた。

「あたしは、高木優といいます。飯田さんの隣のクラス…C組です」

直樹は少し、たじろぎながら、優のまっすぐな瞳に、捕らわれていた。

瞳に、ストレートに意志が出ている。

屈託がない。

この子は…。

「きみは…」

危険だ。

直樹の直感が、警告していた。

この子から、離れろと。



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