黄昏に香る音色 2
広い湯船に浸かりながら、里緒菜は、深いため息をついた。

あたしは…心が弱い。

「あんな女に…」

里緒菜は、湯船に顔まで浸かった。

涙は、流さない。

「お嬢様…」

扉の向こうから、声がした。

「奥様がお持ちです」

湯船から、上がると、

「わかりました。すぐ行きます」

泣いてる暇なんて、

里緒菜にはなかった。


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