黄昏に香る音色 2
地下鉄の階段を駆け上がり、外に出た和也は、予想外の夜の冷たさに、身を震わせた。

駅から、見上げるとダブルケイが、山をバックに見えた。

和也は、逆の方向へ下っていく。

家は逆だった。

今日は、モデルの仕事が遅くなった。


和也が歩いていると、前から、直樹が来た。

「直樹?」

直樹も驚き、

「和也!?」

「何してんだ?こんなところで…」

和也は、直樹に駆け寄った。

「バイトの帰り…じゃないよな」

直樹は、視線を少しはずしながら、

「バイトは、とくっに終わったけど…ちょっと気分転換に」

「店は?」

和也の問いに、

「そう閉めったよ。今日は、引きが早かったらしい」

どこかおかしな様子の直樹に、和也はきいた。

「速水に会いに行くのか?」

「まさか…もう遅いよ」

少し寂しげな直樹。

「店なら、やってるぜ」

「俺は、未成年だ」




「直樹…」

和也は直樹を見つめ、

「お前ら…付き合ってるんだから…。たまには、少し無理言って、甘えるのもいいんだぜ」

「甘えると、無理を言うは…違うよ」

直樹は、寂しく笑った。
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