黄昏に香る音色 2
「ちょっとだけ…夜風に、あたりに来ただけだから…」

手を上げ、去っていく直樹の背中に向かって、

和也は叫んだ。

「そんなに辛いものかよ!」

直樹は止まらない。

「お前ら!付き合ってるだろ!好きなんだろ!」

直樹は、振り返りもしない。

「ちょっと待てよ。直樹!」

和也は直樹を追いかけ、肩をつかんだ。

「好きだったら、ぶつけろよ!気持ちを」

直樹は、振り返る。

その目は鋭く…

切ない。

「直樹…」

「お前に…何がわかる…」

そう言うと、和也の手を、肩から振り落とした。

「直樹…」

直樹はまた、歩きだす。

「直樹!」

和也には、叫ぶことしかできなかった。




直樹は立ち止まり、振り返った。

「すぐ帰るから…」

直樹は、微笑んだ。

「心配するな…」

また歩き出す。



和也は、何もできず…
ただ見えなくなるまで、直樹を見送った。

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