黄昏に香る音色 2
「この音は…」

直樹は、公園の入口で、立ち止まった。

少しヒンヤリする夜の中で、

優の周りだけ、暖かく感じられる程…

そのギターの音色は、やさしかった。

直樹は、弾いてる相手がわからなかった。

少し聴き惚れてしまう。

あまりに素晴らしかったから、聴いてることが、邪魔をしてるように感じた。

あまり足音を立てないように、直樹は静かに、出ていこうとする。


ギターが止まった。

「待って!」

優は叫んだ。

直樹はその声に振り返り、ギターを弾いていた優の姿を認めた。

「キミは…」

優は、直樹に向かって、
微笑んだ。

「聴いて下さい!」

優は再び、ギターを弾きはじめた。

なぜなら、この演奏は、

直樹に聴かせる為だったから。

優は、ビリー・ホリデイで有名な曲…

ラヴァー・マンを奏でる。

直樹は、その独特の旋律に動けなくなった。

さっきとは一転して、優は、直樹を見つめながら、

ギターを弾き続けた。

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