黄昏に香る音色 2
直樹は、最後まで…

優の演奏を黙って、聴いてしまった。

静かに余韻を奏でるように、ギターを終える。

直樹は、拍手をすると、

頭を下げ、去ろうとした。

「ギターを渡されたら、どうしますか?」

直樹は足を止めた。

質問の意味がわからない。

「ほとんどの人は…メロディーを奏でるらしいです」

優は、ギターをベンチに置くと、

「あたしはリズムを刻む…少数派です」

優は、立ち上がった。

「アメリカのジャズシーンは、最初ギターをリズム楽器として捉え…ソロは弾けなかった」

直樹は訝しげに、

優を見た。

「それが、アンプの進化と…ギターをソロ楽器として、使っていたヨーロッパ…特にギターが国器であったスペイン…」

優は、ギターをちらっと見、また視線を直樹に戻し、

「から来た異邦人…ジプシーである…ジャンゴがアメリカで、リズムでメロディーを奏でるという…音を広めました」

まだ理解できない直樹に、優はクスッと笑い、

「あたしは…異邦人です」

「異邦人…?」

「ここではない…何かを求めている」

「ここではない…何か…」

優は頷き、

「あなたもまた…あたしと同じものを感じます」
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