黄昏に香る音色 2
「大丈夫」

扉が閉まり、走り出した電車の中で、

恵美が、香里奈の肩を叩いた。

「恵美…」

電車が次の駅に着く。

「おれ、ここだから…」

恵美は微笑みながら、電車を降りた。

「また学校でな」

恵美は降りると、香里奈を乗せた電車が発車するまで、見送った。

香里奈は、電車の中で、手に振りながら、恵美の姿が見えなくなると、

そのまま、電車のドアに、倒れるように…頭をつけた。

あれは…

あの包丁は…

あの男は…

あの悪意は…

あたしに向けられていた。

一体、どうして…。


神の啓示とは…

何なの…。


香里奈には、真実はわからなかった。
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