黄昏に香る音色 2
二人
手術は無事に終わり、ベットに横たわる和也のそばに、

直樹はいた。

「お前も帰れ…」

意識が戻った和也が、言った。

美奈子は、一旦店に帰り、の予約があった為、

それだけすますと、夜には病院に戻ってくる。




「和也…」

夕日が沈み、

夜がやって来る空を、直樹は窓から眺めていた。

「何だ…?」

和也は、直樹の方を見た。

直樹は、自嘲気味に笑い、窓ガラスに頭をつけた。

「俺は、何やってんだろ…」

「直樹…」

「お前は…好きな人をちゃんと守ったのに…」

直樹は、拳を握りしめた。

「情けないよ…」

和也は、直樹から視線を外し、

「だから…逃げるのか?」

直樹は、和也を見た。

「守れなかったから…あいつと釣り合わないから…逃げるのか?」

和也もゆっくりと視線を、直樹に戻した。

2人は、お互いを見つめ合う。

和也は問いかけ、直樹は答えを探す。

直樹はやがて…フッと笑うと、和也から、視線を外した。

「直樹!」



「和也…」

もう答えなんか、とっくに出ていた。

直樹は、和也に近づき、ベットの端に、手を置いた。

「俺が…」

そして、和也に顔を近づける。

「逃げるような男に、見えるか?」
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