黄昏に香る音色 2
直樹が帰った後、

しばらくして、病室のドアが開いた。

「母さん…?早かったな………!?」


「こんな時間に…ごめんなさい」

入ってきたのは、里緒菜だった…。

「如月…」

和也は驚き、

「どうしたんだ…」

「非常識だと思ったんだけど…。一言…お礼が言いたくて」

里緒菜は深々と、頭を下げ、

「ありがとう。あたしのせいで…こんな怪我をして…」

里緒菜が、泣いていることに、和也は気づき、

「やめてくれ!」

思わず、身を起こそうとして、

「痛っ!」

痛みに、体をのけぞらした。

「藤木くん!」

里緒菜は、走り寄った。

「大丈夫?」

顔をしかめながらも、

「大丈夫だよ」

そして、

泣いている里緒菜の涙を、和也は指で拭った。

「お前を…泣かす為に、やったんじゃないんだけどな…」

和也は、微笑みかけた。

「あたしのせいで…」

「如月のせいじゃないよ…」

和也は、里緒菜を見つめ、

「それに…如月が怪我する方が…俺は…こんな傷より、痛いんだ…」

和也は、何とか動く左手で、里緒菜を抱き寄せた。

「無事で…本当によかった」




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