黄昏に香る音色 2
「臭いな…」

パイプ椅子にもたれ大輔が呟くと、

後ろから手が伸びてきて、大輔から紙を、ひったくった。

「勝手に、何見てるのよ!これはまだ!完成してないのに」

大輔は、恐る恐る振り返ると、結構お冠の志乃が、立っていた。

「最低」

志乃はそう言うと、

そっぽを向き、スタジオから、荷物持って出ていこうとする。

「まだレコーディングは…終わって…。ごめん、志乃!」

大輔は、慌てて椅子から、立ち上がると、志乃の背中に、謝った。

志乃は振り返り、舌を出した。

大輔はさらに焦り、話題を変えた。

「志乃…お、お前…好きなやついるのか?」

大輔の質問に、

志乃は、ドアのノブを掴みながら、

「さあ〜」

視線を大輔に合わさず、曖昧な言葉を残す。

「もし…できたんなら…お、俺に、報告しろよ!」

慌てて、口ごもる大輔に、
志乃はいやらしい笑みを浮かべ、

「どうしょうかな〜」

そして、笑みから一転して、アカンベーをすると、志乃はドアを開けた。

「俺は…リーダーなんだぞ!」

大輔の虚しい叫びも、ドアを閉めたら、聞こえない。

志乃はクスッと笑うと、

大輔から取り戻した…歌詞を書いた紙を見つめ…



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