黄昏に香る音色 2
カモメが、飛び交う夕暮れ。

サミーは歩いていた。

海辺近く…

佇む1人の男のそばまで…。


「明日香はどうした?」

サミーの問いかけに、

啓介は、振り返らずに、

こたえた。

「部屋で、曲を書いてる」

「珍しいな…」

サミーは、啓介の隣に立った。

「影響されてるんだろう…」

2人の目の前が、だんだん暗くなっていく。

「perfect voiceか…」

サミーの呟きに、

「ああ」

啓介は頷いた。




「啓介…」

サミーは、啓介を見た。

「何だ」

啓介は、サミーを見ない。

「もうお前には…関係ないことだ…」

啓介は、フッと笑った。





数ヶ月前。

全米を襲った…音のドラッグは、

突然現れた…

歌声により、一掃された。

perfect voice。

1人の少女によって…。

彼女の名は、

クリスティーナ・ジョーンズ。

舞い降りた天使は、

その…この世の声とは思えない歌声によって

人々を癒やし、

瞬く間に、

全米一位。

大統領さえも、ファンと公言する…。

すべての話題を、独占していた。


「音のドラッグは…パーフェクト・ヴォイスの為の、布石に過ぎない…」


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