黄昏に香る音色 2
「あの子に、音楽を教え、歌の楽しさを、最初に教えたのは…マルコだ」

「だまれ!」

ティアは、叫んだ。

物凄い形相で、啓介を睨み、

「あんたに!あの人の名前を呼ばれたくないわ」

ティアは、ジュリアの方を向き、

「あたしたちの国から、世界最高の歌手を育てたい…。彼は、そう言ってた…」

ティアは、両手を広げ、

「それは、もうすぐ叶う」


「芝居がかってるねえ〜」

端から見ながら、ジャックは笑った。

「啓介!ステージに上がりなさい。最高の歌を聴かせてあげる」

ティアの言葉に、

啓介は、鼻を鳴らすと、

楽器ケースから、アルトサックスを取り出した。

いつのまにか…ステージには、バックミュージシャンがスタンバッていた。

皆、表情が虚ろだ。

「曲は?」

ステージに上がった啓介が、ティアを見下ろした。

「あなたの得意な曲で…」

ティアは閃いた。

「そうだわ。あれがいい」

ティアはニヤッと笑い、曲名を告げた。

「LikeLoveYouのYasashisa」

啓介は、アルトサックスを構えた。

ジュリアは、啓介を見ない。

演奏が始まった。

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