黄昏に香る音色 2
「啓介…あんたが、あたしたちを裏切ったから、いけないの」

ティアは、ステージ中央に佇んでいるジュリアを見、

「ねえ〜あなたも、そう思うでしょ?ジュリア」


ティアの言葉に、

ジュリアは、ゆっくりと啓介に近寄り、

啓介の前に、立った。

「あなたがいけないのよ。啓介」




しばらくの間があって、

啓介は、恐る恐る顔を上げた。

さっきの口調…。

似ている。

見下ろすジュリアの瞳と、啓介の目が合った。

黒い瞳。

啓介は目を見開き、

ジュリアの瞳を凝視した。

「ま、まさか…」

啓介は、この瞳を知っていた。

「バカな…有り得ない…」

呟いた啓介に、

ティアは笑いかけた。

「あらあ…多分、正解よ」

啓介は、ジュリアの瞳から

動けない。

ティアは、楽しくって仕方がない。

「ジュリアのドナー提供者は…日本人よ」

震える啓介。

「天城百合子」

ティアは、耳元でゆっくりと話し出す。

「ジュリアの目と、心臓は、百合子のものよ」

「バカな…」

ティアは、震える啓介に

微笑みかけた。

「あなたに、もう1つ…教えてあげたいことが、あるの」

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