黄昏に香る音色 2
「明日香が育てている…和恵だったかしら?」

「和恵が…どうした」

啓介は、力を振り絞り、ティアを睨んだ。

ティアはクスクス笑う。

おかしくてしょうがないみたいだ。

「あんたも、明日香も…和恵は、百合子とあんたの間に、できた子と思ってるみたいだけど…違うわ」

ティアは大爆笑した。

「本当は、ただの…誰の子かわからない…捨て子よ」

ティアは笑顔を、啓介に近づける。

「そんなバカな…」

さらに、ショックで崩れ落ちる啓介。

「何の為に…」

「わからない?」

ティアは笑いをとめ、

「最高だと思わなーい」

ティアは立ち上がり、

「自分の愛する男が…他の女に、産ませた子供を、育てる明日香!どんな気持ちだったかしら?」

ティアの笑いが、店内にこだまする。

「でも、その子は!まったく知らなーい、赤の他人ですから!」

啓介は絶句した。

「百合子に、提案してやったのよ。あんたがほしいって、あたしに言うから」

ティアは、啓介を見下し、

「あたしは、あんたの音がほしかった。でも、事故が起こって、百合子が死ぬことは…予想外だったけど」

ティアは、アルトサックスを蹴り飛ばし、

「でも…もういらないわ。こんな音」
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