黄昏に香る音色 2
数日後。

ジュリアは、エドワードの依頼により、

ある教会に来ていた。

教会に来る人々の為に、歌うのだ。

ゴスペルを。

ここは、ゲットーといわれる

アメリカの貧しい地域。

ある意味、真実の地域だった。



ティアは、ゴスペルを嫌っていた。

黒人が、神に救いを求める音楽。

お前たちは、生まれながらにして、罪人…。

だから、神に救いを求めないといけない。

生まれながらの罪人。

ふざけるな。

これこそ…差別だ。

なぜ罪人なんだ。

ブルースが、悪魔の音楽といわれるのは、

黒人が本音を歌うから。

本当なら、

聴きたくもない音楽だけど、

エドワードの依頼だから、

仕方なく受けていた。


ジュリアは、教会の祭壇の前で、ゴスペルを歌う。

ただやさしく、丁寧に。

数曲、歌い終わると、

ジュリアの周りを、子供たちが囲んだ。

「お姉ちゃん!歌、上手だね」

そう言った子供は、楽しそうに微笑んだ。

その子供たちが、

ジュリアには、

かつて、一緒に過ごしたけど、

顔はわからなかった…あの施設にいた子供たちを、

思わせた。
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