黄昏に香る音色 2
「誰か!誰か!早く!病院に…」

ティアは叫ぶ。

ジュリアは、椅子から倒れた。

ティアは、ジュリアを抱き起こす。

叫び声に気づいたホテルのボーイは、扉を開け、ジュリアの様子に気づき、

慌てて部屋を出た。

「ジュリア…どうして…」

ティアは泣きながら、ジュリアを抱きしめた。

ジュリアはゆっくりと…顔を動かし、

「あの施設から…マルコお兄様とティアお姉様に…助け出され…あたしは、いろんな世界を見ることができた…」

ジュリアは、ティアの顔を覗き込み、微笑むと、ティアの頬に触れた。

「お姉様は…本当は誰よりもやさしい人。だけど…そのやさしさを、あたしだけに向けて…他には、抑えてる。無理やり…」

「ジュリア…」

「自由になって…お姉様…」


部屋に、救急隊員が入ってくる。

ジュリアが、飲み干した皿をチェックした。

毒が盛られていた。

それは…ジュリア自ら、入れたのだ。

「お姉様…」

ジュリアは、ティアの顔にゆっくりと触れていく。

「やっぱり…お姉様は…綺麗」

ジュリアは嬉しそうに、微笑んだ。

「最初に見えたのも…お姉様だった…」

「ジュリア…」

「最後も…」

ジュリアはにこっと笑う。

「お姉様でよかった…」

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