黄昏に香る音色 2
「ティア…やめて!死んではいけないわ。逃げては駄目よ!」

明日香は叫んだ。

ティアは大声を上げて、笑った。

「ハハハ…逃げる?逃げてるのは、今の方よ。生きてる方が、あたしは逃げているのよ」

ティアの言葉に、

明日香は愕然とし、動きが止まった。

「生きていてどうするの?」

「生きていれば…」

明日香の言葉を遮る。

「もう…この世界に…あたしの愛する人は…誰もいないのよ」

ティアは、片手で黒い箱を、ぎゅっと抱き締め、

「明日香…あんたに頼みがあるの。この子を…故郷に帰してほしいの。マルコが眠る…あの土地に」

箱には、ジュリアの遺骨が入っていた。

「やっと…向こうにいく決心ができた…。あの人と、あの子たちがいるところに…」


「ティア!」


「今から…いくわね…あなた」

ティアは、とても幸せそうな笑顔を浮かべた。


銃声が轟いた。

ティアが銃の引き金を弾いたのだ。

「ティア!!!」


今、

ティアは旅立った。

この世から、

愛する人が待つ世界へ。

それは、自殺なのか…。

ただ…

ティアは、解放されたのだ。

愛する人のいない世界から…。

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