黄昏に香る音色 2
あれから…数週間後。

明日香と啓介は、ティアの故郷にいた。

小さな丘の上に、慰霊碑はあった。

殺された人々を祀った墓。

この国は…新政府と大国の支援により、落ち着きを取り戻していた。

もう十数年前の話だ。

かつての古い街並みは、破壊され、

新しいビルが立っていた。

あれほど、弾圧の対象になった音楽も、

街に溢れていた。


「安定が保たれ、余裕ができたら…人は、娯楽を求めるものさ」

啓介は、まったく別の国になった土地を見つめた。

明日香は、ティアとジュリアの遺骨を納めた墓に、花束を供えた。

慰霊碑の近くに、墓は建てた。

「そして…次は、金儲けになる…」

明日香と啓介が、墓から離れると、

どこからか、人々が現れ、

次々に花を供えていく。

自分達の国からでた歌姫。

まだ小さな…生まれ変わった国の英雄。

明日香は、丘を下りながら、目の前に広がる街並みを眺めた。

「もし…。今の…音楽溢れたこの国を見たら、彼女は…喜んだかしら?」

「さあな…俺にはわからないけど…。もう別の国だからな…」


「啓介…」

明日香は足を止め…後ろを振り返った。


「あたしは…音楽に憧れた。恵子ママの…ダブルケイのやさしい音に…」


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