黄昏に香る音色 2
残り香
本田淳の事件より、数週間がたった。

淳は懲戒免職となり、

教師をクビになるとともに、

拘置所に入れられたが…

精神的障害がある為、

罪に問われるかは、わからなかった。




トントン。

軽くノックをすると、

里緒菜は、書斎に入った。

大きな机に、書類の山。

それに埋もれるように、

里緒菜の母親はいた。

「あなたを呼んだのは、他でもないわ」


母親は、かけていた眼鏡を外し、

里緒菜を見た。

「転校しなさい」

「え」

里緒菜は驚いた。

母親は、深くため息をつくと、

週刊誌を、里緒菜に差し出した。

「この前の事件。被害者の1人として…あなたの名前と会社の名前が載っています」

里緒菜は、記事を見た。

如月グループの令嬢…事件に巻き込まれる。

「今回は、怪我もなく、無事にすみましたが…もし、怪我でもして、傷が残ったら…」


「商品価値がなくなりますか?」

里緒菜は、母親の言葉が終わらぬ内に、口を開いた。

「里緒菜さん!」

母親の怒声が飛ぶ。

「あなたは、如月グループの跡取りなのです。もっと自覚しなさい!」

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